北海道冬の旬 その1 ~寒締めホウレンソウ~

寒締めホウレンソウ

写真・播種後30日。普通栽培と同じ

 

  BNN読者の皆様明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

 今年の北海道は雪が少なくしかも暖冬です。住みやすいと喜んで良いのでしょうか?勿論、目の前の状況を見る限りでは有り難いことです。札幌の今頃は少なくても積雪1メートル以上にはなっているのが当たり前です。それが少ないわけですから喜ぶのは当然です。

 しかし、そのしっぺ返しは何時どんな形で現れるのでしょうか。不安に思っているのは私ばかりでは無いと思います。温暖化は一歩一歩着実に近づき、それが気温、降水量、日照等に影響し台風や竜巻、洪水、干ばつ、熱帯となって私たちの生活を脅かします。それらの現象は天災でなく人災なのです。人災ならばその対策は今からでも出来るのではないでしょうか。1人1人がこの問題を深刻に受け止め日常生活において取り組んでいかなければならないと思います。

 私が専門とする農業も大きく影響しています。化石燃料の出現で農業は大きく変化しました。言い換えると石油製品は農業に革命をもたらしたのです。ビニールハウスと暖房は、それまで日本人が最も大切にしてきた食文化による人間形成の崩壊にも繋がってしまいました。日本列島は北海道から沖縄まで南北に位置しており、その地域、季節で採れたものを大切にして守り、育て、そのことを伝統としてきました。現在では、外国からの輸入と合わせて、日本中のものが北海道で栽培し季節を問わず食べることが出来るようになり、旬が無くなってしまいました。その為に農地は酷使され有機農業中心から機械化された化学肥料や農薬を使わなければやれないような農業に変換されてきました。結果、アレルギー、アトピーや喘息、精神的疾患、糖尿病や高血圧の生活習慣病、更には最近頻繁に起きる青少年の犯罪等も農や食の変化に大きく左右されると表現する人もおり憂慮する事態となっております。

 これからは地元のものをもっと大切にしていく運動、即ち地産地消が必要だと思います。その為には、農業者はそれに合った農業を展開し、農地・農村をオープンにして、体験の場や交流の機会を作り消費者にアピールしていかなければなりません。消費者もまた農業、農村を理解し育てるようにしていかなければならないと考えます。

 今回は、その第一弾として冬場における北海道の旬を紹介します。題して「寒締めホウレンソウ」余り馴染みのない言葉だと思います。

 ホウレンソウは昔から冬が旬とされてきました。それが身体によいとか、栄養価が高いとか、言われ始めると全国いたるところで年間通して栽培されるようになりました。特に、農家では少しでも高く販売したいと同じ畑で年5回も6回も栽培しています。更に四季それぞれに合った品種も開発されるようになり、年間を通して新鮮さを売り文句にして店頭に並んでいます。冬場の関東を中心にしたハウスもののホウレンソウはお世辞にも美味しいとは言えません。でも、消費者は本当の美味しさを知らないので、身体に良いと信じて食べているのが実態です。

 そこに着目した北海道農業研究センターでは、2003年度からの試験で、道内の厳しい寒さが栽培に適しており、暖房代をかけずに育てられると言うことで、冬の寒さにさらして、うまみを出させる「寒締(かんじ)めホウレンソウ」(東北地方では1995年頃より)の研究が始まりました。

 ホウレンソウは、ビタミンA効果のあるカロチンを多量に含むほか、ビタミンB2、C、葉酸やカルシウム、鉄、ヨード、マンガンなどを比較的多く含む緑黄色野菜の代表だからです。特に、カロチンと鉄の含有量は、野菜の中でも1、2を争うものです。そんな意味からも野菜の摂取が不足する冬場の栄養源として注目されるものと考えます。

 こんな素晴らしい情報を得た私たちグループでは2004年に研究センターの指導を得て100平方メートルのビニールハウス3棟で実証試験を行いました。9月播きの指導でしたが伊達市という地の利や経験から10月播きで十分間に合うと考え行いましたが12月までには十分な大きさにならず失敗に終わってしまいました。しかし、S規格のものが殆どだったにも関わらず糖度が12度(ミニトマトより高い)と非常に高く美味しいものでした。早速札幌のスーパーで取り扱って頂いたところ消費者の方々から大きな反響があり、これはいけると自信を持ちました。今年は3戸の仲間が1200平方メートルのビニールハウスで栽培、現在、出荷最盛期を向かえており、徐々に寒締めの知名度も上がりつつあります。

 更に、2006年秋には東北農業研究センターから「寒締めでホウレンソウの硝酸含量が低下」ー良食味で安全・安心な冬野菜の生産― と言う試験結果が発表されました。「ホウレンソウの硝酸含量は乳幼児が過剰摂取した場合、窒息症状を引き起こす場合があること等から、野菜に含まれる硝酸含量の低減が求められている」のテーマで、その試験を寒締めホウレンソウで行ったところ「ホウレンソウをはじめとする野菜は生長に必要な窒素養分の大部分を土壌から硝酸の形で吸収・蓄積しますが、低温によりこの吸収が抑えられることで硝酸含量が減ると考えられます。また、低温下でもホウレンソウは生命活動を続けているため、体内に蓄えていた硝酸を消費していくことでさらに含量を減らしていると考えられます。」と言う。寒締めが安心・安全に繋がっている画期的な栽培法で有ることが実証されたのです。

 私たちのグループではコマツナの試験栽培も行い来年への足がかりもつかみました。これからは他の野菜についても順次取り組み燃料の節約、そして安心・安全な農産物に挑戦し消費者との連携を深めながら信頼関係を築き足腰の強い農業を目指して行こうと思います。

 

播種後40日

写真・順調に生育、播種後40日

 

 

普通栽培はこの状態で収穫

写真・普通栽培のホウレンソウはこの状態で収穫する

 

 

寒締めが始まった状態

写真・寒締めが始まった状態。葉が徐々に広がってきた

 

 

寒締め収穫適期

写真・寒締め収穫適期。葉がタンポポのように完全に広がった

 

 

ハウス

写真・雪が降ってもハウスは開放

 

 

店頭に並んだ寒締めホウレンソウ

写真・店頭に並んだ寒締めホウレンソウ。普通のホウレンソウの2から3割高く取り引き 

 

 

試験栽培したコマツナ

写真・コマツナも試験栽培したが糖度7度で十分の甘みが感じられた

 

 

NPO法人 農業塾風のがっこう
http://www.kaze-school.com/

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