NPO法人農業塾風のがっこう専務理事
酪農学園大学教職センター教授 長谷川 豊
平成14年3月。40年近く携わってきた北海道の農業高校を退職した。何百人もの農業の後継者や関連する企業に生徒達を就職させて来た。その子達が日本の農業を背負って立って欲しいとの願望からである。その教え子たちもそれぞれの道で活躍していることは教師にとっての生き甲斐である。
しかし、折角希望に燃えて選んだ農業を途中でリタイヤした者も数多くいる。彼らは止めたくて止めたのでは無く先が見えない農業に対応出来なくて土地や施設設備を投げ出して農業から去って行ったのである。農村では若者がドンドン減少して過疎化が進み農地が荒廃した。そんな状態が続く中、今度は農業を経験したことが無い会社勤めの人たちが農業を目指して農村に入り出した。狙いは良かったがそれに対応できるだけの受け皿が出来ていなく殆どの人は夜逃げ同然に去って行ったのも事実である。
私も、農業高校教職半ばの頃、農業高校には後継者を目指す生徒よりも農業に何ら関係のない生徒が増えだした。彼らに目的意識をと農業の魅力を説きその素晴らしさを実感させた。彼らの中から何人もの者が将来の農業者を夢見て本気で農業をやりたいと卒業後、個別の農業実習や生産法人への就職。アメリカでの農場研修に取り組み経営に必要な知識技術は勿論、農村の一員としての文化や伝統、コミュニケーションを培い出番を待った。しかし、農業者としての道は険しく結論的にはその道を閉ざされてしまった。理由はともかく農業をやる者が居ない今、農業に挑戦したい人や興味のある人を教育して日本の農業を守らないと大変なことになる。
と言っても闇雲に希望者を就農させるのではない。それを理解した者が彼らと本気になって付き合い、その場その時に応じて厳しい時代を生き抜いて行けるような指導を施さなければならない。幸いにして現在の農業は、生産一辺倒の時代から脱皮して付加価値をつける農業に大きく変化している。言い換えるとやり方次第では生計を立て得る職業へと転換してきているのである。
これらを克服し一人でも多くの農業者を育成したいとの願望から平成16年12月NPO法人農業塾風のがっこうを設立した。
これからの農業の持つ魅力は
① 安心、安全な食品への生産(消費者教育)
② 高齢化による土への欲求(グリーンツーリズム構想)
③ ガーデニングブーム等のセラピー効果への注目(環境と農業の重要性)
④ ネットワークの充実による地域間格差への消滅(物流・情報革命)
⑤ 自然環境・観光資源への共存(自然と農村景観との融合)などである。
ただし、原料をそのまま販売するやり方では、雇用も産業も生まれない。安心・安全で旨いものを作り、加工し、販売するという一連の流れを確立し、宣伝し、人を呼ぶやり方をしなければ魅力ある地域とはならない。
この構想のために、良き指導者・指導機関、理解者、技術者・商品開発者が集まり官民一体となって取り組むことが成功への秘訣である。
新規参入者への研修援助
都会の雑然とした環境の中で働くことに疑問を感じ、自然を求めたり職業としての農業へ関心を向けている新規参入予備軍は大都市圏を中心に多数存在している。しかし、農業という職業に就こうとする時、多くの制約があり、その殆どの人は道を閉ざされている現実がある。そして、農業技術を学ぶ場や資金、土地・農業機械等、越えるべき問題は数多くある。
そこで、「農業塾風のがっこう」の援助活動として基本的な体験実習、農業技術学習、新規参入者と経営者との交流会、講演や意識教育の実施。また、就農前の実践的な研修としての先進農家への橋渡しや宿泊施設をも提供する。したがって、研修生は基本的な知識・技術は「農業塾風のがっこう」で、本格的な研修は農家で行う。研修生が農業者となるための農地、資金等の情報も提供していく。
農業塾風のがっこう事業化の目的
地域における事業化支援、人材育成をはかる。特に、将来農業経営を目指す若者を研修生として受け入れ企業人としての農業経営技術を習得する。また、関係する高校生、大学生等に農業、環境保全の重要性や職業としての農業を認識するために地域と連携してインターンシップなど体験の場を設定する。その他、循環型農業について調査研究、普及啓発を行い広く社会に提案する。
最重要課題は人の養成と資金
開設して5年目を向かえたが農業塾風のがっこうの果たす役割はあまりにも大きいことが分った。それほど現在の農業にはたくさんの解決しなければならない事が山積している。燃料、流通、環境、消費、気象、そして、人とお金の問題。
特に人の養成は急務である。国や道も担い手養成を重要課題として動き出した。しかし、肝心な事は農業をどのような人にやらせるかである。昔の農業者のように生産にかけては超プロなる経営者を求めても無理である。
風のがっこうには、年間何十人もが短期研修に入るが、殆ど農業に関わった事のない人である。作業はこちらから指示をする。最初は頑張ってやる。そのうち、仕事のコツを覚えて自分で工夫を凝らしてやる人、言われた通りの事をやる人、飽きてしまって段々作業が進まなくなる人、はじめから手を出さない人など様々である。しかし、そのままで終わってしまうと農業の理解者はでない。農場にはいくつもの作業が存在する。作業は、その人の興味、関心を示す分野から入る。例えばパソコンや機械に明るい人がいればそこから入り他の作業へと深まりを持たせる。この手法は他の産業のやり方であるがこれからの農業はオールマイティも必要だが部門別のプロを養成し、そのプロの集団が一つのものを作り上げていくそんなやり方が社会を形成していくのでないか。
もう一つ大切なことは、資金の問題である。現在、風のがっこうでは研修生のために会社を興し(エイチアンドケイ)そこでの実習や、福祉施設との作業委託を行いながら資金を捻出している。しかし、研修生の学習の場となる農場からの収入では十分に賄うことが出来ない。このことが上手くいかないと人の養成どころでなく我が身が倒壊の危機に直面している実態である。是非多くの賛同者を募り知恵と汗の提供を頂きながら構想実現に向けて努力していきたい。
連絡先
特定非営利活動法人農業塾風のがっこう
〒005-0823 札幌市南区南沢3条2丁目15-5
Tel・Fax 011-571-3387
特定非営利活動法人農業塾風のがっこう伊達事業部
〒052-0003 伊達市幌美内町36-1
Tel・Fax 0142-82-8787
E-mail info@kaze-school.com
資料1 主な事業内容
Ⅰ 事業化支援
1 農業を起業する人材の育成
「農業の担い手育成」 後継者の育成 新たに農業を目指す人の育成
「農業に関する技術者の育成」
2 企業、関連団体、農業者等と安心・安全な農業について連携
「新しい農業経営体系の確立」生産プラス付加農業の確立
「新しい作物の開発と普及」寒締め野菜等
「販売方法の研究と指導」生産と消費のあり方
Ⅱ 調査・研究
1 環境保全を視野に入れた新しい農業の検討
「有機農業定着の為の有効な土壌や微生物の発見と開発」
土壌改良材(適正堆肥化処理カッセー工法)の効果試験と普及
病害虫忌避材(食品成分の配合 64564)の効果試験と普及
2 子どもの職業的能力を高める農業体験
「小中高校生、大学生の農業インターンシップ」(高校生サマーアグリキャンプ)
3 農業以外の企業、職種などとの連携
「栽培、飼育を通した癒しの研究」園芸療法など
「障害者の社会復帰を目指した農業訓練」経営と指導法の研究
4 価格安定を目指した調査・研究
「消費者等との直接取引」産地直売、都会での出前直売、宅配などのあり方
Ⅲ 普及、啓発
1 技術講習会
2 短期農業体験受け入れ指導
資料2 主な施設設備
1)伊達市西関内171番地(有 エイチアンドケイ所有)
面積 1,66ha 鉢花、野菜栽培
伊達市館山町
面積 3,0ha 野菜栽培
*主な施設
ビニールハウス 410平方メートル 3棟 鉢花栽培
370平方メートル 2棟 鉢花栽培
1100平方メートル 1棟 野菜栽培
410平方メートル 1棟 野菜栽培
350平方メートル 3棟 野菜栽培
410平方メートル 1棟 野菜栽培
資材格納庫 500平方メートル 1棟
直売所 50平方メートル 1棟
2)委託農場 (太陽の園所有)
面積 農耕科 野菜栽培 1ha
酪農科 採草地 3ha 牧草地 3ha サイレージ用地 1ha
*主な施設
乳牛(搾乳)10頭 (育成)4頭
養鶏 1000羽 平飼い有精卵
加工 市乳、アイスクリーム
3)その他 岩見沢農場(ほのぼのファーム所有)
写真・障害者施設の委託事業 農場全景
有珠山と内浦湾ロケーションは最高。将来的には観光農業と結びつけたい
写真・農業生産法人エイチアンドケイ全景。野菜と花卉の実習圃場
写真・露地野菜(キャベツ)栽培も行われる
写真・花卉の栽培は研修希望者も多い
写真・長谷川豊
写真・ミニトマト「アイコ」フルーティなミニトマトは有機無農薬栽培。
札幌のホテルと契約栽培野菜の中では一番の安定作物
写真・高校生サマーアグリキャンプ 全国から高校生を募集。大学生がスタッフとなって
10日間の農家実習。将来は農業やりたい高校生や大学生も多い
写真・昨年はモンゴルの大学生も研修に来た。野菜を学び
自国で指導者を目指す。風のがっこう研修の後、農家での実習も行う
写真・ボランティアの方も多く訪問する。室蘭花みづきの会が
草取りボランティアとして応援して貰う
写真・昨年末東京にてインフォメーションバザールに参加。
農産物や加工品のPRを兼ねて研修生募集も行う
NPO法人 農業塾風のがっこう
http://www.kaze-school.com/


