日本代表「0勝3敗」を予測した"タコ解説者"と全戦的中のパオル君

6月27日付スポーツニッポン

写真・パオル君がドイツのイングランド選勝利を予
言したことを報じた6月27日付ニッカンスポーツ

 

 サッカーワールドカップ南アフリカ大会は、スペインの優勝で幕を閉じた。

 正直に言うならば、日本が決勝トーナメント初戦でパラグアイに敗れてからは、どことどこが戦っているのかさえ定かではなく、ドイツが3位になり決勝でスペインがオランダを破ったことぐらいしか知ってはいない。

 いや、確かに決勝前は、オランダが優勝すれば日本との0-1のあの戦いがクローズアップされるのではとも思い、スペインに対しては予選リーグ初戦でスイスに敗れながらの決勝進出を凄いとも思ったものだ。

 しかしながら、全ての結果が明らかになった今、一番の驚きはタコの「パオル」君だ。ドイツの水族館にいるパオル君は、勝敗の全てを的中させ、いまや「神託タコ」と世界中に知られることとなった。なにやら、たこには脳が9つもあり、好奇心の強さは桁違いなのだという。恐るべし、である。

 日本選手のパラグアイ選後のコメントもとても良かった。

 本田は、「応援してくれた人も、批判してくれた人もありがとうございました。いずれも、前に進む力を与えてくれました」と言い、長谷部は「これからはJリーグを応援してください」とキャプテンシーに溢れたコメントだった。

 PKを外した駒野のところには、同級生の松井、阿部が寄り添い「今夜は死ぬまで飲ませてやる。僕たちは同級生なんだから・・・」と言い、首に回した手を離さず駒野以上に涙を流し続けるその姿は、日本人の琴線に触れるものだった。

 駒野の失敗直後、私は「大丈夫か?今夜は協会関係者かチームメートで不寝番を立てなくちゃ」「ちゃんと日本に帰ってこれるか?」と思ったものだ。その心配も、松井、阿部両同級生のフォローをみて消し飛んだ。先輩に慰められると申し訳なさが倍加し、後輩に言われると消え入りたくなるものだ。こういうときは同級生に限る。「アホ・馬鹿・まぬけ・・・」こういう言葉すら、心に沁みるものになるからだ。

 日本チームは「奇跡」を起こした。

 成績のことではない。監督も関係者も選手も皆が同じことを言った。「このチームでやれたことが誇りだった」「このチームでまだまだやりたかった」。

 スポーツの世界でこういう現象や状況が起きるのは、奇跡的なことだ。スキーで言うならば、1972年札幌冬季五輪70メートルジャンプメダル独占と1998年長野五輪ジャンプ団体金メダルの時に匹敵する。

 スポーツの世界では、0点とか0勝で負けたことを「タコ」と言う。「3タコでやられた」「まいったよ、4タコだった」などと使う。

 パオル君の占いは「8戦全勝」。いまや世界的知名人ではなく、世界的知名タコだが、日本国内にはかなりの数の「タコ解説者」が誕生した。予選リーグは「0勝3敗」、だから「監督更迭」と声高らかに叫んだ解説者。「岡ちゃん、失格。目を覚ませ、サッカー協会」と横断幕を掲げたサポーター。サッカー専門誌で、監督退陣を特集した編集者もいた。本田が言ったように、応援、批判両方ありがとうは本質の言葉だ。

 しかし、いけないのは「やる前からの非難」だ。現在足りないものはこことここ。だから、そこに力を入れよ、と言う建設的な意見提案ならば良し。チーム作りの途中で「非難轟々」というのは、単に嫌いか或いは自らの無能力をさらしていることだ。

 非難轟々から、帰国時には賞賛の嵐。

 これは「赤信号みんなで渡れば恐くない」現象だ。

 日本チームが最終的に採用した「専守防衛からのカウンター攻撃」は、確かに弱者の戦術だ。岡田監督自身、コンサドーレ札幌の2年目に採用した戦術だ。そして次のステップは、カウンター攻撃時のシュート力に長けたFWの登場だろう。

 マラドーナ監督が会見で弱い弱いと書きたてたマスコミに対し、「選手に謝れ」と言った。その意見はドイツに0-4と完敗して、消えうせた。

 ブログやツイッターでは、「岡ちゃん、ごめん」と言う書き込みが後を絶たないという。サポーターサイドでは極めて健全な状況が生まれている。喜ぶべきことだ。

 最後に言える事がある。PKを外した駒野のことだ。

 あれはサッカーの神様が、今までの駒野の人生を見ていて、世界中の人々に駒野を覚えさせようとして仕組んだことなのだ。父親を亡くしたのは中学3年時。以来、母親を助け、大学進学を諦め高校卒業からプロの道へ進んだ。家長として母への仕送りを続け、さらに弟には大学進学を勧めその学費は駒野が仕送りしたという。

 多分、日本チームの全員が駒野を守ったのだろう。日本からはメールが山ほど送られたのだろう。

 「次にPKのチャンスがあれば、また挑戦します」駒野はそう語り帰国した。

 いいチームだった。

 私は単なるサポーターの一人だが、「このチームの次のゲームを見たかった」と、心から思った。

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