「まさか、あの日本航空が・・・」と、最初はだれもが思っただろう。しかし、一番衝撃を受けたのは社員だったはずだ。経営悪化を知っていながら「国が何とかしてくれるだろう」と高を括っていた役員や社員は少なくなかったという。恐るべき「親方日の丸」的考えで、破綻の原因はつまるところ、ここにある。
若い頃、海外旅行に何度か日本航空を使ったが、スチュワーデス(現キャビン・アテンダント)の傲慢さに腹が立った記憶がある。
学生時代の卒業旅行に初めて海外旅行をしたときのこと。若いスチュワーデスに夕食の飲み物を訊かれ、コーヒーを頼んだところ、あからさまに顔をゆがめられた。
「お客様、食前のお飲み物はソフトドリンクでございます。コーヒーは食後の飲み物です」。
"そんなことも知らないの"というバカにした様子がありありで、まさに慇懃無礼。食事のマナーも知らない田舎者のおねえちゃんを「お客様」扱いすることは、彼女のプライドが許さなかったというわけだ。
要するにエリート意識が強すぎるのだろう。
鶴丸マークの誇りだか何だか知らないが、「私はアンタたちとは違うのよ」という、大きな勘違いが会社を腐らせる一因となったことも否めない。
比べて全日空のスチュワーデスには良い思い出しかない。
ある時、姉と東京に行った時に利用した機内は、夜の便でずい分空いていた。私たちと同じ年頃のスチュワーデスがお茶と菓子をサービスしてくれたのだが、しばらくして「よろしければもう1ついかがですか」と声をかけてくれた。とても小さなことだが、人間というものはこうした心配りに感動するものであり、忘れないものである。それ以降、私はなるべく全日空を利用するようになった。
おそらく原価100円もしないサービスによって、彼女たちは数十万円の売上を伸ばしたのである。まさに"損して得取れ"の鑑だ。
日本航空破綻のニュースはまた、1997年に経営破綻した北海道拓殖銀行のことも思い出させた。北海道の日銀とまでいわれたが、バブル期の行き過ぎた不動産開発によって不良債権がかさみ、崩壊に至った。
10年ほど前には、百貨店のそごうが破綻している。その頃、私は喫茶店を経営していたが、朝刊の1面にそのニュースが載った日、仕入先のパン屋のおじさんはこう言った。
「バブルの時は、俺たちみたいな小さな会社は、そごうにテナントを出したいと頼んでも鼻先で笑われて終り。拓銀に融資を頼んだ時も全然相手にしてくれなかった。ところが、自分が危なくなってきたら、向こうから声かけてきたんだよ。もう遅いって、はっきり断ってやった」
"実るほど頭を垂れる稲穂かな"。
バブルの時でなくとも、常にこのように自分を戒めていれば、倒産しないで済んだ企業はたくさんあっただろう。企業破綻のニュースを見聞するにつけ、この言葉が頭をよぎる。


