なぜ若者は選挙に行かないのか

小泉純一郎氏

写真・2005年の「郵政民営化解散」で、衆
院選の投票率は一時的に上昇したが・・・

 

 参院選が近い。今回の選挙は、先の首相辞任によって与野党はもちろん、乱立した新党のさまざまな思惑をはらみ、なかなか面白くなりそうだ。

 選挙の時期になると投票率が注目されるが、ずいぶん前から若い世代、特に20代の投票率の低さが深刻な問題になっている。

 若者が選挙に参加しようとしないのは、各政党の政策が有権者の多数を占める高齢者向けにシフトしていることも理由の一つだろう。

 では、例えば具体的な雇用促進など若者に向けた政策を強化する政党があれば、投票率は飛躍的に上がるだろうか。私は政策云々の前にもっと大事なことがあると思う。

 なぜ、若者は選挙に行かないのか。

 以前、日本在住の30代のノルウェー人男性に「日本の若者は子どもっぽい」と言われたことがあったが、私はそれを否定できなかった。理由の一つとして、政治や社会問題への関心の低さを挙げていた。

 確かに、しばしばテレビなどで、欧米のロックミュージシャンや俳優など若者に影響力のある人たちが政治を批判したり、社会貢献をしたりするニュースを見るが、日本でそうした有名人はほとんどいない。また、政治的、社会的な問題をテーマにしたデモ行進などを日本で見るのも数えるほどだ。

 政治や社会に関心が薄いのは、日本の歴史や地理的環境にそもそもの理由が潜んでいるように思う。

 20年以上前、直木賞作家の深田祐介氏のエッセーだったと思うが、ドイツの家庭で裏庭の扉に3、4個の鍵を付けているのを見て驚いたという話を読んだことがある。大陸の国ならではで、その裏には侵略と征服が繰り返されてきた歴史的時代背景が見える。代々受け継がれたこの危機感は当然、自分の声が反映される社会を作ることに繋がっていく。格差社会と呼ばれる以前の日本は長いこと安全で平和な国と言われてきたが、これからは安穏としてはいられない。高齢者の犯罪も増えている。考えを改めるべきだ。

 もう一つ、若者が投票に行かないのは、どこかの大学生も言っていたが、ただ「面倒くさい」ということもある。もしかしたら、これが最大の理由かもしれない。この辺りが子どもっぽさの現れである。

 若者に投票に来てもらうために、サービスを付けたほうが良いなどという人もいるが、今の若者が子どもだと認めてのバラマキ対策で、恥ずかしいことこの上ない。

 3年ほど前、若者の政治への関心を高める意味もあって選挙権や成人年齢を18歳に引き下げる論議がなされた。しかし、20歳を過ぎても子どもっぽい「大人」が多い状態での「引き下げ」は本末転倒になりはしないか。18歳から選挙権を与えるのなら、例えば中学や高校で政治や経済、社会のしくみをカリキュラムの一つとしてきっちり教えるといった対策を講じることが必要だ。

 いうまでもなく選挙への参加は「権利」である。それなのに、若者にとっては行きたくないのに行かされる「義務」になっているようだ。まず学校で選挙の前だけでもいいから、日本で選挙権がどのように国民に与えられることになったかを教えることから始めてはどうだろう。選挙年齢の引き下げはその後の話だと思う。

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