高齢化の進展でビジネスチャンス 需要高まる「訪問理美容」 前編

病院や介護施設に赴き、店舗売り上げの2割を確保。

療養中のお年寄りを散髪する山下秀治さん

写真:療養中のお年寄りを散髪する山下秀治さん。ベッドでの仕事は、髪の毛1本たりとも落とさないよう気を使う

 

 高齢化社会の進展に伴い、理容師や美容師が寝たきりの高齢者宅などを訪れ、散髪や顔そりなどのサービスを行う「訪問理美容」が注目されている。道内では人口減と長引く不況で多くの理美容業者が厳しい経営を強いられているが、訪問理美容を起死回生のビジネスチャンスとしてとらえ、積極展開する業者も出てきている。「待ち」から「攻め」のビジネスへ―。訪問理美容の現状を探った。

 小樽市中心部の病院。療養中の87歳の男性は、手足が不自由なため、ベッドの上で髪を整えてもらった。顔をそりさっぱりすると、うれしそうに目を細め、「ありがたいことです」と手を合わせた。

 小樽市錦町で「カット&パーマ ヤマシタ」を経営する山下秀治さん(56)は月に2回この病院を訪問している。この日の利用者は8人。スタッフと2人で手分けして散髪と顔そり、髪染めを行った。病院など利用者が多い施設では、待ち時間を短くするため1人10分を目安に作業を終えることにしている。

 山下さんが訪問理美容を始めたのは16年前。入院中の祖父の散髪をしてあげ、喜ばれたのがきっかけ。道内では先駆的な取り組みだったという。口コミで広がり、在宅を中心に毎月数軒程度の利用があったが、本腰を入れ始めたのは店の売り上げが落ち始めた数年前からだ。

 人口減に歯止めがかからない小樽は、高齢化率も30%を超す。山下さんが店を構える手宮地区は市内でも高齢者世帯が多い地域だ。売り上げが落ちてきたのは、固定客が高齢化し、外出が困難になってきたこと。家計の出費を抑えるため、来店間隔が長くなってきたためだと山下さんは説明する。

 「主婦層など若い世代も不況のあおりで、30日に一度のカット、パーマが40日に一度といった具合。来店頻度は確実に落ちている。客待ちの商売では経営が苦しくなるのは目に見えていた」

 このまま手をこまねいている訳にはいかない。「客が来ないのなら、こちらから出向いてやろう」と逆転の発想で、以前は片手間的にやっていた訪問理美容に着目。大口の顧客を開拓するため、病院や介護施設に足を運び、訪問理美容について説明を重ねた。営業努力が実を結び、病院、介護施設6カ所とグループホーム、在宅約160軒を担当するまでになった。定休日の月曜日を中心に、山下さんとスタッフ8人が月約300人の散髪や顔そり、パーマをこなす。利用代金(散髪フルコース・シャンプー、顔そり付)、は原則として店の料金と同額(4,000円)に設定。いまでは店の売り上げの2割以上を占める。

 「最初は営業に行っても訪問理美容がどういうサービスなのか理解されず、ろくに話も聞いてもらえなかった。寝たきりのお年寄りは散髪して顔をそり、きれいになると生き生きとした表情を見せる。ただ、銭をもうけるだけでなく、地域福祉の一翼を担う心がまえで取り組みたい」と話す。

 以下、後編に続く。(文、写真・武智)

 

 

後編

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