訪問理美容の対象は、自分で歩いていすに座れる、車椅子、寝たきりの人たちだ。特に要介護者の場合は、体調に配慮しながら散髪しなければならず、きめ細かなケアが必要となる。
山下秀治さんは、福祉理美容の普及活動にあたるNPO法人「全国介護理美容福祉協会」(本部・東京)の北海道支部長として、後進の育成にも力を注いでいる。寝たきりの人の散髪やシャンプーの技術にポイントを置いた、一日講習会をこれまでに計6回開催。道内の理・美容師94人が受講している。
旭川市の河合俊徳さん(45)は訪問理美容で起業して3年目。以前勤務していた理美容店の客の入りが悪く、悩んでいたころに訪問理美容を知り興味を持った。講習会の受講後、独立。現在はスタッフ4人をかかえ、月延べ300人から400人の散髪を手がける。「認知症のお年寄りが、訪問を受けた後に状態が良くなった例もある。利用者の心に一歩踏み入り、元気を引き出すといった点でも必要とされるサービスだ」と話す。
遠軽町在住の若狭里美さん(40)は、5月から訪問理美容をスタートしたばかりだ。結婚を機に勤めていた美容室を辞めた後は、福祉関係の施設で働いていた。5年前に取得した介護福祉士と美容師の資格を生かそうと、訪問理美容を選んだ。講習会に参加する前に、山下さんに同行し現場でのノウハウをたたきこんだという。
「新聞に広告を出しましたが、まだ周知が足りない。すでに理容師を抱えている施設もあり、営業は大変です」ともらす一方、「これまでの介護はどうしても食事、入浴、排泄が中心。だから、きれいになって元気を取り戻してもらえる訪問理美容はやりがいのある仕事です」と力を込める。
いま、山下さんは、訪問理美容を店舗経営から切り離し、独立した一つの事業として展開する計画を練っている。ただ、現状では限られたスタッフで仕事をこなしているため、利用者が希望する日時に訪問できないという弱みがある。
「ビジネスとして成立させるため、利用者が散髪したいと思った日に即座に応じられるシステムを作りたい。結婚や子育てで、店勤めを辞めたが仕事に復帰したいという主婦たちに訪問理美容師として登録してもらい人材を確保すれば、利用者の求めに添ったサービスが提供できるし、小樽以外の地域で展開することも可能だ」と山下さんは話す。
訪問理美容と講習会に関する詳細はヤマシタ商事(電話0134-34-1078)へ。(文、写真・武智)
写真・顔をそってもらいすっきり。高齢者は身だしなみを整えることで元気を取りもどす

