「比例復活」も視野に入れれば、民主全員当選の公算。
写真・上段左から伊東良孝、仲野博子、福島啓史郎、逢坂誠二。
中段左から川畑悟、鳩山由紀夫、飯島夕雁、小平忠正。下段左
から中川昭一、石川知裕、武部勤、松木謙公(敬称略)
「政権交代まで12日」。衆院選が公示された18日、民主党北海道合同選対本部に張られた政権交代のカウントダウン。民主党は道内12小選挙区で全勝を目指している。
世論調査のデータや弊社独自の取材結果では、比例復活も含めると、民主党の全候補者が当選する勢い。
道内の選挙事情に詳しい人物は、民主党が今回の衆院選で自民党候補者をリードしている理由を「郵政研(郵便局長やそのOBらで組織する「郵政政策研究会」)が味方になったこと。共産党が候補者擁立を見送った選挙区があること。無党派が民主党の方を向いており、従来の自民党支持層が崩れている。この4点に加え、新党大地と選挙協力」と解説する。
郵政研は、自民党の支援団体だった特定郵便局長のOB会「大樹」を昨年、衣替えした政治団体。「郵政解散」と銘打ち小泉旋風が吹いた2005年8月の前回衆院選で自民党は歴史的な勝利を収めたが、郵政研は郵政民営化の抜本的な見直しを掲げる国民新党の政策と合意した民主党候補を支援する。
前回、道内選挙区で4勝8敗の惨敗を喫した自民党は、今回小選挙区で7議席獲得の目標を掲げるが、多くの選挙区で民主党候補に水をあけられている。
以下、道7区から12区までの当落予想。
[北海道7区](釧路、根室管内)
△伊東良孝 60 自新 元釧路市長
仲野博子 50 民前 元根室市議
金成幸子 50 諸新(幸福実現党) 主婦
各選挙区で民主党候補が優位な戦いをする中、3選を目指す仲野博子は自民新人の伊東良孝と激戦を繰り広げている。郵政解散で自民が追い風を受けた前回選挙で、新党大地代表・鈴木宗男の支援を受けた仲野は、釧路市で自民・北村直人を上回る票を獲得、2度目の挑戦で7区を制した。昨年11月の市長選では鈴木の元秘書・蝦名大也を支援し、当選に尽力した。共産が候補擁立を見送った今回は、「反自民票」の取り込みを図り、与党批判を展開している。
伊東は7区有権者の半数以上を占める釧路市を地盤に市議、道議を経て市長を務めただけに知名度抜群。多くの後援会組織を有し、一次産業従事者にも浸透を図ってきた。
民主党はマニフェストに盛り込んだ「日米FTA(自由貿易協定)締結」に、農業団体が猛反発したことを受け、「交渉を促進」に改めることを発表したが、農漁業と酪農が基幹産業で保守の強い選挙区だけに、伊東にとってはプラス材料と見られている。
[北海道8区](渡島、檜山管内)
福島啓史郎 63 自新 元参院議員
◎逢坂誠二 50 民前 元ニセコ町長
佐藤健治 52 無新 救う会道南代表
西野晃 32 諸新 幸福の科学函館支部長
保守分裂の構図で、民主・逢坂誠二が圧倒的に優位。元ニセコ町長の逢坂は、前回は比例道ブロックで初当選。5期務めた金田誠一の後継として小選挙区初挑戦で2選を目指す。選挙区内のほとんどの地域に後援会を立ち上げ、労組を中心に票固めをしている。
自民は山口県出身の農水官僚で元参院議員の福島啓史郎を擁立。過去2回、自民の公認を受けた佐藤健治は今回無所属で立起、元総務庁長官・佐藤孝行の次男として地元出身を強調する。
保守分裂の背景は、中選挙区時代から続く、佐藤孝行と元北海道開発庁長官・阿部文男との熾烈な対立。自民は小選挙区移行後、4連敗を喫している。こうした状況から、公明は福島を除く、自民党候補11人の推薦を決めている。
[北海道9区](胆振、日高管内)
川畑悟 38 自新 元任天堂社員
◎鳩山由紀夫 62 民前 党代表
佐藤昭子 66 共新 元歯科医院職員
里村英一 49 諸新 幸福の科学出版月刊「ザ・リバティ」編集長
民主代表・鳩山由紀夫の8選が確実。自身は全国遊説のため地元入りできず、「故人献金」問題も取り沙汰されているが、それよりも「北海道初の首相」に対する期待感が勝っている。
今回が初挑戦となる自民の新人・川畑悟は、まだ選挙区内の浸透度が低い。
[北海道10区](空知、留萌管内)
飯島夕雁 45 自前 元東京都青ヶ島村教育長
○小平忠正 67 民前 党代議士会長
大林誠 36 諸新 幸福の科学職員
7選を目指す民主・小平忠正と前回比例で復活した自民・飯島夕雁の一騎打ち。
前回の選挙は、郵政民営化に反対して自民の公認を得られなかった山下貴史(現・深川市長)と、刺客・飯島の立起によって、自民支持層が分断。飯島の当選には「山下票」の取り込みが不可欠だが、"後遺症"は続いている。さらに郵便局関係者の支援は民主党に転じ、小泉チルドレンだった飯島は苦戦を強いられている。
「小平党」と呼ばれ、農民協議会などの強固な農業票を基盤とする小平は、新党大地との選挙協力も票の上積み材料。
[北海道11区](十勝管内)
中川昭一 56 自前 元財務・金融相
△石川知裕 36 民前 元衆院議員秘書
渡辺紫 60 共新 元紋別市議
今年2月のローマでの「もうろう会見」で財務・金融相を辞任した中川昭一の当落が最大の焦点。辞任後は精力的に地元入りし、妻と「おわび行脚」を続けてきたが、一定の支持者を失ったことも事実。中川の盟友である首相の麻生太郎は、日本・太平洋諸島フォーラム首脳会議が開かれた5月に中川支持者の集会に出席、公示後の19日も帯広での街頭演説で自身の監督不行き届きを陳謝した。
一方の石川知裕も、違法献金事件で小沢一郎の公設秘書が逮捕されたことを発端に検察の参考人聴取を受けたが、その影響は少ないとみられ、もうろう会見と麻生内閣の支持率低迷は追い風。同郷の鈴木宗男が代表を務める新党大地との連携、中川支持層の切り崩しが奏功すれば、打倒「中川王国」を果たす、歴史的な選挙になる。
[北海道12区](宗谷、網走管内)
武部勤 68 自前 元党幹事長
△松木謙公 50 民前 元衆院議員秘書
笠松長麿 56 諸新 幸福の科学北海道正心館講師
町村、中川と並ぶ自民の道内大物代議士の中で最も劣勢にあるのが、元幹事長の武部勤。首相だった小泉純一郎に仕える「偉大なるイエスマン」を自任、刺客の擁立などを取り仕切ったが、いまとなっては郵政民営化など一連の構造改革が、地方を疲弊させたとして強烈な逆風になっている。
武部の"地盤沈下"は、一昨年の道議選から始まった。民主・松木謙公の秘書だった田島央一が自民の現職道議に勝利。続いて昨年12月の北見市長選では、武部が推した神田孝次と民主、新党大地の推薦を受けた小谷毎彦が激突、小谷に軍配が上がった。
道2区から国替えした松木はこれまで2回武部に挑み、いずれも比例で復活当選を果たしたが、武部との票差は徐々に縮まり、地域への浸透も深まっている。
新党大地が先月、比例代表道ブロックに元郵政相・八代英太の擁立を発表した際、八代は「今日の格差社会、社会的弱者が切り捨てられていく流れは小泉構造改革がもたらした大きなツケ。こうした状況をつくり出したのは小泉、竹中、武部の三悪人だが、小泉さん、竹中さんはいなくなり、武部さんだけが残っている。次期衆院選で民主党をバックアップし、最後の三悪人を一掃するという思いで出馬を決意した」と気勢をあげた。
今回の選挙は武部ばかりでなく、小選挙区での3連敗はできない松木にとっても背水の陣だが、松木が「三度目の正直」を果たしそうだ。
(文中敬称略 年齢は投票日時点 文・取材班)


