中川昭一 56 自前 元財務・金融相
○石川知裕 36 民前 元衆院議員秘書
渡辺紫 60 共新 元紋別市議
北海道11区は、これまで磐石の戦いを続け、9期連続当選を目指す自民・中川昭一と民主・石川知裕による一騎打ちの構図だが、先の「もうろう会見」で支持者が離反した中川は守勢に転じている。
「小泉構造改革で得をしたのは大企業だけ。地方や弱者は多くの痛みを伴った。帯広では10年前より50万円も皆さんの所得が減少している。無駄な公共事業の一因となっている縦割り行政や政・官・業の癒着はなくさなければならない。今回の選挙で政権を代え、時代に合わなくなった制度を変え、行き過ぎた改革に歯止めを掛けて、本当に困っている人に再配分しようというのが民主党だ」
衆院選・北海道第11区(十勝管内)に立候補した石川は、22日、音更町での街頭演説で、そう訴えた。石川は2005年の前回選挙に初出馬、落選後、比例代表北海道ブロックで繰り上げ当選した。
11区は、父・一郎から地盤を受け継いだ中川が8期連続で当選を果たした別名"中川王国"。前回の衆院選が初挑戦となった石川は約8万5000票を獲得したものの、中川に2万票を超える差を付けられた。
ところが、今回は、麻生政権の支持率低迷に加え、財務・金融相だった中川が、今年2月にローマで引き起こした「もうろう会見」を発端に自民党支持者が離反、王国の地盤が根底から揺らいでいる。各種世論調査やBNNの独自取材でも、石川が中川を引き離している。
「石川は、民主党支持層の9割以上、同郷の鈴木宗男が代表を務める新党大地支持層の8割近くを固め、自民、公明支持層の切り崩し、無党派層へのアピールを続けている。有権者の政権交代に対する期待が高まっており、すべり出しは良かった」(石川陣営幹部)
ところが石川陣営には懸念材料もある。
「ここにきてマニフェストの日米FTA(自由貿易協定)締結問題が強烈に響いている。農業が基幹産業の十勝にとって、FTAの締結(民主党は農業関係者の反発を受けて「締結」を「交渉を推進」に修正)はまさに鬼門。十勝は帯広、音更、芽室、幕別の1市3町で有権者の73%を占めるが、こうした都市部にも農業関連業者は多く、反感を買っている部分もある。中川離れは間違いなくあるが、その票を石川が取り込めるかは不透明。世論調査で言われているほどリードしていると思わない」と警戒する。
一方の中川は「もうろう会見」による閣僚辞任後、地元で「おわび行脚」を続けてきた。支持団体の集会や夏祭り会場に精力的に足を運ぶなど、かつてないほどの「ドブ板」に徹し、今月9日の総決起集会では「断酒宣言」もした。「戻ってきた支持者もいるが、いまだに1割は離れたまま」(中川陣営幹部)というのが実情だ。
中川陣営幹部は「前回は閣僚として全国を遊説したため、最終日の30分、帯広入りしただけ。今回は(もうろう)会見に対する批判も多く、非常に厳しい戦いとなっているが、酒をやめてからは、『以前よりも笑顔が多い』『明るくなった』などと言われ、有権者に反省は伝わっている。自民党支持層の8割近くは固めたと見込んでいる。FTA問題では反対集会に3000人が集まるなど、有権者の農業政策に対する不安は大きく、本当に民主党に任せてもいいのかという声は多い」と説明する。
公示後の19日、帯広を訪れた首相・麻生太郎は、中川と一緒の街頭演説で「もうろう会見」を陳謝した。続いて22日には元首相・安倍晋三が選挙区入りし、自民党への支持を訴えた。安倍と街頭に立った中川は、民主党の外交や教育政策、FTA問題を批判し、「十勝はヨーロッパにも引けを取らない日本が誇れる農業地帯。民主党に政権を任せれば、十勝の農業、すべての産業、皆さんのくらしが崩壊する。日本がおかしくなってしまう」と訴えた。
前回衆院選での11区の投票率は72.99%。小選挙区の全国平均(67.51%)を大きく上回った。
中川、石川両陣営とも、今回の投票率が2~4%程度上昇すると観測、当落ラインを10万票と見込んでいる。
石川は違法献金事件で小沢一郎の公設秘書が逮捕されたことを期に検察の参考人聴取を受けたが、その影響はほとんどみられない。民主党に対する追い風と中川の失態を要因に、「大金星」を挙げる勢い。新人の渡辺紫は、共産党支持層以外には浸透していない。(文中敬称略 年齢は投票日時点 文、写真・糸田)

