さまざまな理由で就学や就労などの社会的活動を行わない引きこもりの長期化、高齢化が進んでいる。
引きこもりは道内にも数万人いるとみられ、札幌市内の支援団体によると、その多くが30代後半に移行している。
「親が亡くなったら、子供はどうなるのか」。大人の引きこもりを抱える家族の悩みは深刻だ。支援団体からは「すぐに就労を」と焦らず、ボランティア活動など幅広い社会参加を視野に入れた自立への仕組みづくりが急務とする声も上がっている。
引きこもりの実態は明らかではない。厚生労働省の調査では全国に32万人~41万人、支援団体などの推計では100万人~160万人と幅がある。
一方、徳島大学総合科学部が、昨年11月~今年1月にかけて全国組織の家族会を対象に実施した調査では、引きこもりの8割が男性で、平均年齢30.2歳、最高齢47歳という結果が出た。引きこもり期間は平均8.8年、中には30年間引きこもり状態の人もいた。家族の平均年齢は母親が59.5歳、父親が62.1歳。高齢の親が子供の面倒を見ざるを得ない実態が浮き彫りになった。
引きこもりは不登校からそのまま移行するケースが多いとみられていたが、文部科学省の追跡調査によると不登校からの「引きこもり組」は23%にすぎない。引きこもりは成人した大人の問題であることを裏付けている。ただ、大人の中には、学校時代にいじめや不登校の経験を持つ人が多い。近年の傾向ではいったん社会に出てから職場の人間関係、いじめが原因で引きこもる人が増えているという。
酪農学園大学講師(教育福祉学)で、支援団体「レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク」(札幌)事務局代表の田中敦さんは「引きこもりの人はコミュニケーションが苦手。どちらかというと真面目で完璧主義の人が多い」と語り、失敗はできないというプレッシャーが外に出ていくことや就労への恐怖となり、引きこもりを長引かせていると説明する。
引きこもりの長期化は家族とのあつれきを生む。札幌市内の20代後半の男性は、高校卒業後、市内の工場で働き始めたが、職場に馴染めず2年余りで退社した。コンビニへ買い物に出掛ける以外は自室に閉じこもる生活を8年間続けている。60代の母親は「夫は息子を放任するばかりで、夫婦喧嘩が絶えない。世間体が悪く、誰に相談することもできない。夫の定年が近く、老後のことを考えると目の前が真っ暗です」と不安を隠さない。
子供の自立を願う親の心は察して余りある。
しかし、田中さんは、早期解決を急ぎ過ぎてはいけないと警告する。雇用情勢が厳しい中、就労経験の乏しい人が、就職という形で社会復帰することは極めて困難だ。特に30代後半の引きこもりは就労を急ぐよりも、まず、自分を表現する方法やコミュニケーションの力をつけることが自立への足がかりとなるという。
それを実現させるため、田中さんは2年前、35歳以上の引きこもりを対象にした自助グループ「SANGO(さんご)の会」を立ち上げた。ここには、特別な支援プログラムはなく、月2度の例会で、参加者たちが短いスピーチをしたり好きな音楽について語り合うなど、自由で楽しい雰囲気の中で自分を表現している。
田中さんは「引きこもりの人には安心できる居場所をつくることが大切です。会の活動を通して、支援グループのボランティアスタッフとして働く人も出てきた。就職だけでなくボランティアなど幅広い社会参加の仕方もある。こうした支援の仕組みづくりが今後は重要になってくる」と話す。
以下、後編に続く。(文、写真・武智)
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