札幌市内には、「モデル公開中」などの看板を掲げたマンションが地下鉄駅周辺などに多く建ち並ぶ。
こうした物件の中には完成から1年以上を経たものも少なくない。マンションの購入条件は立地と価格が決め手とされるが、立地条件に恵まれた物件でさえ、なかなか買い手がつかないためだ。
平成18年から続くマンション不況は今年4年目。耐震偽装、用地や建築資材の値上がり、リーマンショックを引き金にした急激な景気の悪化などを要因に市況の冷え込みが続き、今年は過去最悪の状況で推移している。
住宅流通研究所(札幌)の調査によると、9月の分譲マンションは新規発売戸数(21年発売)、成約戸数(21年以前の繰越物件を含む)とも、9月市場としては平成最少だった。
住宅流通研究所の入谷省悟所長は「成約が少ないのは景気が悪いことに尽きる。各社は新規の発売よりも、繰越物件の処理を優先しているのが現状。これまで札幌のマンション市況には、谷の次に山が来たり、その逆もあった。ところが、この4年間はずっと谷が続き、どん底まで落ち込むこれまでにないパターン。マンション市場が誕生して以来、最低の状況」と説明する。
9月の新規発売戸数は206戸(前年同月比17.6%減)、成約戸数は184戸(同18.9%減)で、冷え込みが激しかった前年を大きく下回った。
1月~9月までの新規発売累計は1358戸(前年同期比33.7%減)。残る12月までの3カ月間を合わせても、これまで最少だった昭和51年の1696戸を下回ることが確実視されている。成約戸数は、市場に出回っている約半分が大幅な値下げをしている繰越物件であるにもかかわらず、1715戸(同16.9%減)にとどまった。
9月末現在の在庫は1263戸。新規物件の在庫が665戸、繰越物件の在庫は598戸(17年10戸、18年32戸、19年84戸、20年472戸)だが、新規には前年の期分け物件が多く含まれているため、実際にはさらに少ない。
過去最大級と銘打ってスタートした最大600万円(長期優良住宅の場合)の住宅ローン減税も、札幌の場合は5000万円の高額物件がほとんどないため、効果は見られない。
「20年に発売された3LDKの繰越物件は平均600万円の値下げによって実売価格は2000万円程度になっている。買い手にとってはかつてないほどの好条件だが、乱売しても売れないのが実情。中央区などでは、マンション用地を取得しても売れないため、戸建て用地として売り出す業者も出てきている」(入谷氏)
9月の総出回戸数は繰越と新規を合わせて1447戸。前述した成約184戸のうち、9月の新規物件はわずかに63戸。全体の成約率は12.7%にすぎない。
ある業界関係者は「在庫を処分をするため、大幅値引きに加え、家具や照明、カーテンを付けることもある。それでも市内には同様の物件が多く残っており、買い手は簡単に見つからない。売れ残りを多く抱えると、新たなマンションを建設するための融資も受けられず、悪循環に陥っている」と明かす。(文・東)


