勝負事は、勝ちに不思議の勝ちはなし、負けに不思議の負けもなし、が鉄則だと思う。
パ・リーグクライマックスシリーズ(CS)第1ステージは、楽天がソフトバンクを一蹴し、いよいよきょうから北海道日本ハムファイターズとの間で第2ステージが始まる。
勝負は天の時、地の利、人の和、つまり天地人から考えれるものだ。
結論から言うならば、きょうからの第2ステージは日ハムVS楽天野村監督の戦いになる。
読者のみなさんは覚えておられると思うが、日ハムがレギュラーシーズン優勝を決めたあと各球団の監督談話が発表された。野村監督は「スーパースターはいないが、中の上の選手でまとまっていた」と発言した。この発言は実は野村マジックの始まりでもあった。他球団の監督で、相手チームの選手たちを「中の上」と表現した人はいない。確かに、選手としてもスーパースター、監督としても日本一を達成した監督だから言える言葉なのだが、この言葉は相手に対しては「このやろう」と冷静さを失わせ、味方に対しては「かなわない相手ではないよ」というメッセージなのだ。
天の時という意味で考えれば、間を空けず試合を重ねながら進出してきた楽天が有利だ。チームとしての実戦から遠ざかった日ハムは1勝の利こそあるが、第1戦を失えば2敗したぐらいの差が生まれるだろう。いかにスーパースターであろうが、中の上の選手であろうが、試合勘が失われるとどうしようもなくなるものだ。
地の利は圧倒的に日ハムが有利だ。全戦、ホームである札幌ドームが会場だ。
が、しかし、楽天にはやっかいな選手が一人いる。彼だけは地の利を身につけている。しかも第3戦の登板が予定され、王手をかけるか、あるいは立ちはだかるか、重要な局面に立つことが予想されるのだ。そう、駒大苫小牧高出身の日本プロ野球界の若きエース、田中将大投手だ。愛称「マーくん」は、日ハムよりも先に北海道に野球の感動を持ち込んだ駒大苫小牧高のエースだった男だ。日ハムファンのなかにも、「1敗ぐらいはいいよね、マーくんに完封されての1敗なら大歓迎」という空気があるのは事実なのだ。混戦になったときにマーくんが大車輪の活躍となるのが恐ろしい。
人の和という意味では、すでに野村マジックが炸裂している。「私は解雇を言い渡されました。かくなるうえは、日本一になってファンの皆様へのお礼といたします」この言葉がすべてを物語っている。
これを言える背景は、野村監督へのファンの支持率が85%という現実がある。野球を知らない球団フロントへの反骨反発心を表現することでファンの同情心に呼びかけ、合わせてチームの一体感を高めている。だから、野村監督こそがチーム一の人気者であり、これが日ハムVS野村という意味なのだ。
ここにきて正式に謝罪したリンデンをチームに復帰させ、さらにチームの一体感を高めもした。楽天打撃陣でもっとも危険な選手はリンデンとなる。ここで働かなければ彼には来季がない。助っ人外国人選手の宿命だから、セギノールをふくめて要注意だ。
考えてみれば、野村監督得意のぼやきとは、ユーモアとウイットに裏打ちされた教育的指導法だ。しかもそれがTVのスポーツニュースやスポーツ紙誌に大きく扱われることは織り込み済みだ。けなしでもくさしでも無くぼやきだから許される。リンデンの首脳陣批判への対応と許しを見ても、日本における謝罪とはどういうものか、心は姿なり、心は言葉なり、を教え込んでいる。リンデンは札幌に乗り込む前に、チーム全員の前で謝罪するという。これがチームの一体感をまた高めるのだ。
楽天は永井、岩隈、田中と10勝以上の3投手が登板する。日ハムはエース、ダルビッシュが故障のため不在だ。そこにきて、野村監督というやっかいな「おっさん」もいる。21日の第1戦を取られると、楽天に一挙に走られる危険性があるだろう。
日ハムでのキーマンは、打者では糸井、森本、投手では武田勝、藤井、江尻だろう。糸井、森本のような「天然打者」には野村マジックは通じず、武田勝はシダックス時代、藤井はヤクルト時代に野村マジックを体験して種を理解しているし、江尻のけんか投法はマジックに翻弄されないからだ。
いずれにしても、日ハムファンは4万3000人パワーを見せ付けることだ。まあ、3000人ほどは仙台からも入場するから、4万人パワーでも良いが、CSとか日本シリーズとかはプロ野球選手が高校野球選手に立ち返り、一球入魂のプレーをする舞台だけに勇気づけられるものは郷土の応援なのだ。
そして最後には優しく声をかけ、野村大監督を送り出そう。
「野村大監督、長い間の球界への多大なる貢献、誠にありがとうございました。今後はどうぞ奥様と楽しくお静かにお暮らしください」と。(文、スポーツライター・伊藤龍治)
「中の上」の選手たちで勝ち取ったファイターズリーグ優勝
http://www.hokkaido-365.com/feature/2009/10/post-460.html
伊藤 龍治の「スポーツ見聞録」
http://www.hokkaido-365.com/365column/itou/


