陸上自衛隊が制作する大雪像は多くの観客を魅了するが、完成に至る行程は過酷極まりないものだ。
陸自は、来月5日に開幕する「第61回さっぽろ雪まつり」に向け、雪像制作隊を3隊編成し、大通会場で3基の大雪像を制作している。
第3雪像制作隊が大通西8丁目でつくる大雪像は「韓国・百済王宮」。毎年、城などの国宝や歴史的建造物を手掛けてきた第3雪像制作隊は、「ブロック工法」と呼ばれる独自の工法で雪像をつくり上げる。この工法は、瓦や棟飾りなどの細部を「ブロック」で本体に後付けし、繊細な建築様式や装飾品などを表現する上で欠かせない。
制作技術は、先輩隊員から後輩へ口伝で受け継がれ、完成した大雪像の随所には"匠の技"が隠されている。
雪像制作の雪は、札幌市郊外などからトラックで大通公園に運ぶ。第3雪像制作隊は今月14日に、南区の真駒内滝野霊園と清田区の里塚霊園から5トントラック684台分の雪を運び終えた。
しかし、この雪はあくまでも本体に使われるものであり、ブロックづくりに使用されるきれいな雪は、中山峠から運んでくる。
中山峠の雪は、固めた際にできる空洞が少なく、氷や土など雪以外の不純物も少ないため、ブロックに最適。ほかの場所の雪と比べ、わずかに青みがかっており、雪像をより美しく見せることができる。こうした長所から制作隊は、中山峠の雪を「化粧雪」と呼び、重用している。
第3雪像制作隊が、雪像をより美しく見せるための工夫はほかにもある。
ブロックを彫る作業は、気温が高いと雪が溶け、低すぎても雪が固くなって作業効率が低下する。そのため、ブロック彫刻の作業は、氷点下3度に保たれた「ブロック小屋」内だけで行われる。
不純物の混入は雪像を溶けやすくさせるため、制作現場では滑り止めの砂はまかずに作業を進める。また足場に登る前には、必ず靴の汚れを落とす。現場内のごみを発見した場合は、直ちに回収する。
制作工程の最後の作業となる「水割り」も過酷だ。雪像の表面に、薄い氷の膜を形成させるこの作業は雪を溶けにくくする上で不可欠だが、氷の膜を張るには微妙な加減を要するため、すべて素手での作業になる。
これらの手法について第3雪像制作隊の金井田倉幸准尉は、「すべて雪像を長期間、より美しく見せるために隊員たちが考案した方法。自分たちの制作する雪像は、どこにも劣らないという自負を持って臨んでいる」と胸を張る。
百済王宮は、来月3日の完成予定。大雪像は、「化粧雪」や「水割り」のことを踏まえて鑑賞すると、一層、楽しめるのではないか。(文、写真・久保)
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