陸自制作大雪像の舞台裏 雪まつり史上最大「フラウエン教会」に挑む棟梁・毛利智晴さん

実物の3分の1でも高さは26メートル。

 

毛利智晴曹長

写真・陸上自衛隊第2雪像制作隊の棟梁・毛利智晴さん

 

 札幌市中央区の大通公園では、来月5日に開幕する「第61回さっぽろ雪まつり」の会場準備が急ピッチで進められている。

 雪まつりの「大通会場」には5基の大雪像と7基の氷像などを含む計141基が作られる。中でも、陸上自衛隊が担当する大雪像「フラウエン教会」(大通7丁目)は、高さ26メートル、奥行き20メートル、横幅28メートルを誇り、雪まつり史上最大の雪像。完成までには5トントラックで560台分の雪を要する。

 ドイツ・ドレスデンの「フラウエン教会」は、1743年に建設されたバロック様式のプロテスタント教会。第二次世界大戦の空爆で廃虚となったが、世界中からの多額の寄付によって2005年に再建され、ドイツの平和と和解のシンボルとなっている。

 大雪像「フラウエン教会」を制作するのは、陸自北部方面通信群などで編成された第2雪像制作隊の計148人。

 現場をまとめる棟梁の毛利智晴さん(50)は、「毎年、雪像の完成が近付くと何とも言えない感動が込み上げてくる。完成した時はすべての隊員で『作って良かった』という気持ちを共有できる。これだけ大きい雪像を作り上げれば感動も大きいはずだ」と意気込みを語る。

 毛利さんは18歳で陸上自衛隊に入隊。その年から雪像制作隊に加わり、別の任務のために外れた4年間以外は雪像づくりに携わっている大ベテランだ。

 雪像の大きさについて、「ドイツに視察に行った際、教会を再建した時の設計者に『形を変えないでくれ』と頼まれた。言われたとおり忠実に再現しようとしたら、実物の3分の1の大きさでも高さが26メートルになってしまった」と、はにかむが、現場に入ると、厳しい表情で会場全体に目を配り、矢継ぎ早に指示を飛ばす。

 毛利さんが、棟梁になったのは06年の雪まつり。棟梁として、オーストラリア・メルボルンの「フリンダース・ストリート駅」や、タイ・バンコクの「チャックリー・マハー・プラーサート宮殿」、ピラミッドやスフィンクスなどを表現した「エジプトの遺跡」を手掛け、昨年は韓国・ソウルの「崇礼門」を作り上げた。

 「棟梁は準備段階からすべての指揮を執り、会場では自分の作業のほかにも車両の統制や資材の配置など細部もみなければならない。陸上自衛隊は長年、雪像制作に携わっているが、作り方の教科書などは存在しない。それぞれの隊員が作業の中で先輩に技術を学び、それが雪像制作隊のノウハウとなっている。細かな技術やこだわりは各雪像制作隊で違う」

 第2雪像制作隊は、作業ごと7班に分かれ雪像制作を進めている。班長会議は1日4回開かれ、各班が作業の状況を報告し、足場の組み方や隊員の振り分け、作業工程などを微調整する。

 「今回のような細く高い雪像は傾いてしまう恐れがあり、どう安定させるかを設計段階から考えた。周囲にある4つの塔には長さ4メートル以上の鉄パイプを入れて補強し、中心部分としっかり連結させることで傾かないようにしている。難しいのは窓の部分。積み上げた雪の側面を掘ってから面をならし、窓の格子となるブロック状の雪を取り付ける作業だが、1つの窓を作るのに1人で丸1日かかる。いまのところ作業は順調に進んでいるので完成が楽しみ。雪まつりに訪れる人にはきれいな雪像を見てほしい」

 大雪像は来月3日の完成する。(文・糸田、写真・久保、糸田)

 

フラウエン教会

写真・大雪像「フラウエン教会」の制作現場

 

ブロック作り

写真・窓の格子に使う雪ブロックの制作

 

模型

写真・「フラウエン教会」の模型

 

 

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