JALは3セク経営撤退、ANAは路線移転 札幌丘珠空港を直撃する「航空不況」 第3回

森雅人札幌国際大学教授は、「観光や貨物の需要を喚起できなければ、廃港の可能性が高い」と指摘。

ボンバルディアQ300

写真・エアーニッポンネットワークが丘珠路線
で運用するプロペラ機「ボンバルディアQ300」

 

 「丘珠空港のあり方をもっと真剣に考えてほしい」「札幌市が空港をどれほど大事に思っているか見えてこない」「これまで利用促進に取り組んでこなかった責任を感じているか」

 全日空が子会社「エアーニッポンネットワーク(A-net)」の丘珠路線撤退を表明したことを受け、札幌市が昨年12月に開いた市民説明会では、市民から上記のような批判が噴出した。

 撤退理由は、丘珠路線(5路線14便)で就航するプロペラ機はすでに製造中止となっており、後継機が見つからないことなど。A-netは今年7月、全路線を新千歳空港に移転にする。

 さらに丘珠で2路線5便を運航する「北海道エアシステム(HAC)」も、筆頭株主である日航が昨年9月、同社の出資比率を引き下げ、経営から撤退する方針であることを明らかにした。

 A-netの利用客は、丘珠空港の約8割を占めている。札幌市が筆頭株主である「札幌丘珠空港ビル」の収入も、約7割はA-netの賃貸料だ。そのため、A-netの移転に続く、日航の経営撤退問題は、丘珠空港の存続自体を危ぶませる事態となっている。

 丘珠空港の活用策などを調査・研究する札幌国際大学の森雅人教授は「行政がジェット化の議論を先延ばしにしてきたツケが生じた」と語る。

 第2回で報じたように、丘珠空港のジェット化は「エアーニッポン」(現・A-net)が、丘珠路線でのジェット機導入を表明したことを機に1991年に浮上した。道と札幌市は空港の継続利用のために滑走路の延長計画を進めた。

 しかし、騒音や事故を危惧する住民の反対、新千歳空港との機能分担を明確にできなかったことなどから、国の空港整備計画に盛り込まれない公算が高まり、市は96年にジェット化を断念した。

 森教授は丘珠空港に関する問題点をこう指摘する。

 「丘珠空港の昨年度の旅客数は35万人程度。道内の他空港と比べても少ないが、搭乗率は採算ライン(65%)に近い60%程度を維持している。観光よりもビジネス需要が多いため、路線の縮小が道内経済に与える影響は大きいだろう。道内経済の中心である札幌の空港が最もインフラ整備で遅れている。滑走路が短くプロペラ機しか飛べない、便数に制限があるなどのさまざまな制約が緩和されていれば、こうした事態には陥らず、旅客数も現状より多かったはずだ。すでに手遅れだが、丘珠空港の発展にはジェット化や地下鉄からのアクセス改善などが不可欠だったはず。道民や市民のため、本当に必要な議論を先送りしてきた行政の責任は重い」

 企業再生支援機構の下で経営再建に取り組む日航は、先月29日、道に対し、HACの経営から撤退することを改めて申し入れた。

 道総合政策課は「日本航空の申し入れは、出資比率を連結決算の対象とならない15%未満に引き下げること。出資引き下げは企業再生支援機構の支援の前提となっているようで、道としても受け入れざるを得ない。今後、日本航空と株の譲渡先や人的支援などについて協議し、HAC路線を維持できる体制を整えたい」と説明する。

 道は今年度内に今後10年間の道内航空ネットワークのあり方を示す「道内空港活性化ビジョン」を策定する。ビジョンの案では、丘珠空港を道内航空網の「中核を担う空港」と位置付け、「北海道エアシステムが運航する路線の維持を図る」としている。 また、将来的にほかの航空会社による運航と道外路線開設を目指すことも盛り込んだ。

 森教授は「このままの状態でHAC路線を維持しようするのは無理がある。観光需要の掘り起こしやアクセスの改善、周辺道路の整備、海外や道外の就航先開拓など、住民や有識者を含めた幅広い議論の中で、行政が丘珠空港を発展させていくための中長期的な計画を立てることが必要だ。観光や貨物の需要を喚起できなければ、廃港となる可能性は高い」と指摘する。(文・糸田)

 

 

第1回
http://www.hokkaido-365.com/feature/2009/12/post-489.html

第2回
http://www.hokkaido-365.com/feature/2010/01/post-495.html

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.hokkaido-365.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/2436

特集記事北海道のローカルニュースを発信する情報サイト