大手タクシー「エムケイ」(本社・京都)の子会社「札幌エムケイ」が今月22日、営業を開始した。
前編で報じたように、札幌エムケイの初乗り運賃は札幌交通圏(札幌、江別、石狩、北広島)で最も安い550円。運転手は制服・制帽を着用し、客の乗降時に車を降りて手動でドアを開閉する「ドアサービス」を行う。ススキノ地区には常時3台を配車する専用乗り場を設け、1年後には現在の40台から450台まで増車する計画だ。
規制緩和による増車で供給過剰に陥り、さらに運賃値上げや景気後退で客離れが加速する札幌のタクシー業界。業界全体の売り上げが落ち込みを続けるなか、さらなる増車を目論むエムケイに対する地元業者の反発は強い。
地元70社が加盟する「札幌ハイヤー協会」(加藤欽也会長)は、エムケイの新規参入を認めた北海道運輸局を相手取って事業許可の取り消しを求める訴訟を起こしている。
今年2月、提訴後の会見で加藤会長は「利用者にとっては低運賃の方が良いが、エムケイの低運賃は運転手の犠牲の上に成り立っている」とエムケイの給与体系などを批判し、労働基準法違反などを指摘した。
これに対し、エムケイは同協会に公開質問状を送付、訴訟の成り行きが注視されている。
写真:今年2月19日、道運輸局を提訴した札幌ハイヤー協会。写真は同日、会見に臨む加藤欽也会長(左から3人目)ら
エムケイの給与体系について、同社経営企画部は「当社の給与体系は、大きく分けて基本給と業績手当の2つに分けられる。ここで基本給とするのは労働時間に応じた基本的な給与と、残業手当や無事故手当、皆勤手当などの諸手当を合わせたもの。業績手当は各ドライバーの売り上げからコストを引いた残りの額を支給するもの。法律的には何ら問題はない。ドライバーが売り上げとコストの関係を明確に把握でき、1人1人が原価意識を持てるようにこうしたシステムを取り入れている」と説明する。
以下、前編に続く平山功社長との一問一答。
ーー札幌ハイヤー協会は提訴の際に、エムケイの給与制度に問題があると指摘していたが、業績手当のコストとは何を指すのか。
平山 コストというのは車両や燃料、制服など何もかも。普通2種免許所得費用約20万円はドライバーに貸し付けているが、2年間在籍すればチャラとなる。
ーー実際の給与はどのくらいか。
平山 札幌エムケイの基本給は13~14万円。そこに残業手当、深夜手当、無事故手当、皆勤手当などの無事故で出勤日数を満たしていると付く諸手当4万円を加えて18~20万円ほどになる。京都エムケイのドライバーの年収は、おおむね小型で400万円、中型で430万円前後、ハイヤーで500万円強となっている。
--札幌ハイヤー協会に対し、名誉棄損での損害賠償請求などは考えているか。
平山 特に考えていない。エムケイと札幌ハイヤー協会の対立のようなことが報道されているが、基本的には相手にしていないし、直接的に影響があるとは思っていない。正直なところ、いまは札幌エムケイを何とか軌道に乗せることで精一杯、そんな余力はない。世間様が相手にするとは思えないが、今後もしつこく誹謗中傷するようであれば、法律に基づいた行動をとることも考えている。
ーー札幌ハイヤー協会には所属するのか
平山 ケンカに来たわけではなく、まっとうな商売をしに来たわけですから札幌エムケイを軌道に乗せるのが最優先。絶対に所属しないというわけではなく、業界全体を良くしていこうという機運が高まれば共にやることはあると考えている。
ーー北海道運輸局の事業許可と運賃認可が標準処分期間が通常の3カ月を超え、4カ月間以上を要したことについてどのように考えているか。
平山 札幌は他の地域よりも新規参入の条件が厳しい特別監視地域だが、札幌エムケイは台数もきっちり40台揃え、認可のための書類はすべて提出していたので、参入が認められない法律的な理由は何もないと考えていた。にもかかわらず、必要のない書類などもずいぶん提出させられた。(許認可が遅れたのは)札幌ハイヤー協会に提訴されたことで、運輸局がしっかり理論武装したかったのではないか。
ーー開業後すぐに増車する予定はあるか。
平山 増車は申請してから2カ月かかるので早めに決めたいが、開業してからある程度の感触をつかまなければわからない。開業時は車両40台に対しドライバーは66人。まだ研修を終えていない、あるいは自動車学校に行っている、入社が決まっている人を合わせれば、現在、100人近いドライバーがいる。台数と運転手の割合は1台に1.5人は必要と考えているので台数は足りていない。1年後に約450台・1,000人という目標はあるが、増車は開業してから売り上げの状況などを見て体制を整えたい(札幌エムケイは4月27日に北海道運輸局にタクシー20台の増車届を提出、6月26日から計60台で営業する)。
(ききて・糸田 写真・糸田)
写真:今月22日の開業時に白石区の本社営業所を出発するMKタクシー
■平山功(ひらやまいさお) 1951年、京都府生まれ。73年に近畿大学卒業。81年、エムケイ株式会社入社し、04年に同社取締役。08年7月、常務取締役となり、同年10月から札幌エムケイ代表取締役社長を兼任。


