2006年9月、札幌市内のマンションで同居していた女性の娘2人を虐待の末に死亡させたとして逮捕され、殺人など罪に問われている稲見淳被告(32)の公判が11日午前10時から札幌地裁(嶋原文雄裁判長)で開かれた。
稲見被告の罪状は次の4つ。
[殺人] 同居女性の長女・今野星菜ちゃん(当時4)がカレーを食べこぼして服を汚したことに怒り、自宅風呂場で頭部を殴打。意識不明となった星菜ちゃんを病院に運ばず約21時間放置し、硬膜下血腫で死なせた疑い。
[傷害致死] 次女・陽菜ちゃん(当時3)が腹筋をできず、床に肘をついたことに激昂、逆さ吊りにして振り回し、窒息死させた疑い。
[死体遺棄] 2児の遺体を布団圧縮袋に入れ、段ボールに詰めてクローゼットに遺棄した疑い。
[暴行] 2児の母親(保護責任者遺棄致死などで懲役4年の判決が確定)に対して常態的にDVをしていた疑い。
稲見被告は初公判で、2児を虐待した事実は認めたものの、星菜ちゃんへの殺人罪については殺意を否認した。
裁判は07年9月3日の論告で検察官が懲役25年を求刑した。一方、同月10日の最終弁論で弁護人は「(星菜ちゃんの死について)きわめて重篤で、すぐに救急車で運んでも救命できなかった可能性もある」などとして殺人罪ではなく保護責任者遺棄罪にとどまると主張して結審した。
ところが、嶋原裁判長は検察側に星菜ちゃんの救命の可能性(殺人罪の成否)について医学的見地での追加立証を求め、判決の言い渡しを延期した。
こうした経緯から公判は約1年間ストップ。
さらに再開した公判で嶋原裁判長は結審したにもかかわらず、検察官に殺人罪の予備的訴因となる傷害致死罪を追加する命令し、判決を延期させて審理を再開した。訴因追加は殺人罪を認定できない場合、傷害致死罪を適用するための措置。
弁護側は2度の判決延期に対し、「強引な訴訟指揮」だとして最高裁に特別抗告したが、いずれも棄却された。
11日の公判では、弁護人が再度、専門医の証人尋問を求めた。加えて2児の母親の捜査段階での供述調書や公判証言などの証拠調べ請求を行った。
嶋原裁判長は「医師の証人尋問は、(弁護人が)どういった主張、立証をするのかを書面で明らかにしてから判断する。(母親の)供述調書や公判証言の請求については、これまでの被告人質問や証人尋問で終わったものとして棄却する」と述べた。
初公判に証人として出廷した母親が稲見被告の暴行を認める証言をした一方、母親も星菜ちゃんに暴行していたとの主張を続けてきた弁護人は「(母親の証言は)被告人の暴行と長女の死の因果関係を立証する上で重要な証拠だ」として異議を申し立てたが、嶋原裁判長は却下した。
これまでの公判の推移からすれば、札幌地裁が稲見被告の殺人罪を認定しない可能性も考えられる。次回公判は7月7日。(文、写真・糸田)

