小樽運河の保存運動に情熱を注いだ商業デザイナーとして知られる故・藤森茂男さんの画集「デジナーレ」が出版された。藤森さんの生き方に共感した奈良県のタウン誌編集者・堀井清孝さん(44)が遺族らへの取材をもとにまとめた。埋め立て前の運河風景を描いた水彩、デッサンなど150点を掲載している。
藤森さんは小樽市出身。多摩美大を卒業後、小樽に戻り家業の看板店を継いだ。仕事の傍ら、まちづくりに取り組み、「おたる潮まつり」を実現させたことでも知られる。道路建設に伴う運河埋め立て計画に際しては、真っ先に全面保存を訴えた。1973年に市民有志で組織する「小樽運河を守る会」の初代事務局長として運動をリードするが、76年、家業を立て直すため活動の一線から退いた。翌年、脳血栓で倒れてからは、マヒが残った右手にひもで絵筆をくくり付けながらも、運河を描き続け、87年1月、49歳で亡くなった。
画集を出版した堀井さんは、奈良県桜井市でタウン誌「やまとびと」を発行している。3年前、奈良で開催された日本タウン誌全国大会で、藤森さんの長女・五月さん(39)と出会い、プレゼントされた故人のポストカードを見て衝撃を受けた。
藤森さんを運河保存運動に駆り立てた原点は何だったのか―。その答えを出すため、何度も小樽に五月さんや妻の茂子さん(70)を訪ね、その足跡をたどった。
堀井さんは「小樽という街の内情が分からないまま、直感だけで走り始めてしまった。藤森さんの生き方を知り、信念を貫くことの大切さを教えてもらった。藤森さんが亡くなって今年で23年。潮まつりや運河など藤森さんの魂がこもった街の歴史を知らない人が増えている。画集を通して、藤森茂男という人がいたことを知って欲しい」と述懐する。
画集のタイトル「デジナーレ」は、デザインの語源となったラテン語だという。運河埋め立ての杭が打ち込まれた日に、無念の涙を流しながら一晩で描きあげた「赤い運河」ほか、四季折々の運河のたたずまい、妻の茂子さんをモデルに描いたヒット曲「小樽のひとよ」のレコードジャケット、藤森さんの友人らの寄稿文で構成している。
五月さんは「父の念願がかないました。『運河は小樽の財産だ』という父の思いを受け止めてくれた堀井さんに感謝します」と話している。
画集はA4版156ページ、3000円。小樽、札幌の主要書店で販売。問い合わせは運河画廊(電話0134-23-5233)、やまとびと編集部(電話0744-45-3112)まで。(文・武智)
画集を手に「父の念願がかなった」と喜ぶ五月さん


