道内で年間約40億円の農林業被害を及ぼしているエゾシカ。道はエゾシカの増殖に歯止めをかけるため、来月下旬にも、国や道内自治体などと連携して「全道エゾシカ対策協議会」(通称・エゾシカ包囲網会議)を立ち上げ、全道規模での個体数管理に乗り出す。
エゾシカは明治初期の乱獲と豪雪によって一度は絶滅の危機に瀕したが、天敵だったエゾオオカミが絶滅したことなどで北海道東部を中心に次第に個体数を回復させた。1990年代に入ると急増し、農林業被害を及ぼす"厄介モノ"として害獣駆除の対象となった。93年に北海道東部で約20万頭とされていた生息数は、昨年3月時点で52万頭以上と推定されている。
道は98年度から、エゾシカの個体数を減少させるべく、メスジカの狩猟解禁やハンターによる有害駆除に取り組んできた。近年は年間7~8万頭が捕獲されているものの、繁殖力の高いエゾシカは、ハンターの減少や暖冬などを要因に増加の一途を辿り、生息域を全道に拡大している。
道自然環境課野生鳥獣グループは「現在のエゾシカ対策で道が取り組めるのは狩猟の規制緩和のみ。有害駆除は各市町村の役割で、国立公園は環境省、農地は農水省が担当するなど縦割りの弊害がある。このままでは増え続けるエゾシカに対抗できない。エゾシカ包囲網会議を立ち上げることによって、より効果的な対策を講じることができるはずだ」と話す。
エゾシカ包囲網会議の目標は、狩猟と有害駆除に加えて、専門家チームによる新たな捕獲方法を確立し、将来的に年間13万頭のエゾシカを駆除すること。道は来年度から、環境省などと連携して、新捕獲技術の実証試験を開始する。
実証試験はエゾシカを餌でおびき寄せ、複数頭を一気に駆除する「シャープ・シューティング」という手法。米国のNPO団体などが実際に導入し効果を上げているという。この手法はエゾシカを捜索する手間が省けるなどのメリットがある。
ただ、欧米での「シャープ・シューティング」は、夜間にサイレンサー(消音器)を使用して行っており、夜間駆除とサイレンサー使用がいずれも法律で禁止されている日本では効果が出るかはわからない。実証実験では、害獣除けの爆音器などで銃声に慣らせながらエゾシカを餌付けする予定だ。(文・糸田)

